「今日はこれから子ども達のスポ少に付き合います」と屈託のない笑顔で語られる村上さん。脱サラし、ご夫婦で実家の農業を継いで六年目になります。「野球っす」と言われて、なるほどと思いました。日焼けした笑顔も素敵だったし、実直な雰囲気から子ども達と野球をしている姿が容易に想像できました。果樹王国と言われる山形県東根市で、農業未経験だった奥さまの沙希さんが大道さんを全面的に支え、奥様の協力なしには成り立たない多品種栽培に挑戦されています。
父からさくらんぼ、桃、ラフランス栽培を引き継ぎましたが、祖父から三代続く名の知れたさくらんぼ農家の看板を背負うことになりました。固定客が多く、収穫する前から贈答品の予約で埋まってしまい、直売所は、オープンと同時にほぼ完売になってしまいます。
「おじいさんから続くお客さんの期待を裏切れない」という強い責任感で、その年の天候も出来不出来もわからなくても、ちゃんと大粒で真っ赤な甘いさくらんぼを育て、お客様の心を繋ぎ止めているんだなと頭が下がる思いでした。
「父はかなり葉っぱを取っていましたが、私は取りすぎず取らなすぎずバランスが大事かなと思っています」とは、色づきに関する試みのお話。さくらんぼを赤く色付けたいならたくさん葉を取った方がいいけれど、葉は実へ養分を送る大切な器官であり、猛暑への対策から色づきより葉取らずを優先する栽培方法が近年見直されています。双子果が多かったというニュースもよく目にしましたが、村上さんのところでもそうだったようです。
「ブルーベリーの場合は…」と私からいろんな話題を出した時も、「そうなんですね!」とどんどん話を聞いてくださったり、話を広げてくださったりするあたり、貪欲な学びの姿勢も清々しく、始めたばかりのミニトマト栽培もうまくいっているのが頷けました。
村上さんご夫婦がこれからどんな農作物を育て、どんな美味しい時間を私たちに分けてくださるのか、期待が膨らむばかりです。